鳥栖工業レスリング部

鳥栖工業高等学校レスリング部は全国屈指のレスリング強豪校であり、令和５年度の全国高校総体で団体優勝（2年ぶり2度目）を有観客の会場で掴み取った。九州大会では5年間負けなし、近年の高校レスリング界を席巻している鳥栖工業高等学校　レスリング部の強さの秘訣は何なのか。
インタビューさせていただいたのは同校レスリング部の監督であり、レスリング指導者として日本を引っ張る男、小柴健二監督！熱意ある指導者理論と自身の経験談は必見の内容だ。

小柴監督は、群馬県出身、自身も学生時代から全日本選手権にて全国優勝を経験した一流選手だ。1995年レスリングワールドカップ世界2位・1998年レスリングアジア大会2位の偉業を持つ。鳥栖工業高校レスリング部で指導する以前は30歳の時に佐賀県からのレスリング振興の期待を全面に受けて、当時未開の地であった佐賀県へ移り住むことになる。鹿島実業高校で10年間レスリングを指導して、ジュニア・中学生・高校生へ世界で通用するレスリング選手育成を行い、12年前に鳥栖市へ赴任。「鹿島で育てたレスリングが大好きな子供たちと離れることは辛かったけれども、現在も鳥栖工業高等学校レスリング部には鹿島出身の子供たちもいます。みんな強くなるために頑張ってます！」と笑顔を見せてくれた。
2022年同校内に建設されたレスリングセンターは、小柴監督が考えたアスリートが求める施設設計を基に佐賀県の全面バックアップ支援と多大なる期待を受けて運営されている。同センターは、マットが３面弱入る広さで、12台のエアコン付き。トレーニングルームやサウナ、酸素カプセルも設置されている。総工費は4億5200万円。トレーニングルームには最新の筋力マシーン等が揃い、また、減量に活用するサウナ、水風呂、疲労回復用の酸素カプセルがあってコンディショニングに活用できる高校は、全国で例がない。
小柴監督には、2018年にスタートしたSSP（佐賀スポーツピラミッド）構想のもと、全国トップ選手、さらには世界に挑むアスリートを育成して、スポーツ文化の拡大を目指すという大きなビジョンがある。

同校のトレーニングの特徴は小柴監督が大事にしている「考えさせる指導法」がベースにある。レスリングはハードワークと筋力トレーニングをイメージする方も多いと思うが、同校は「実践式」で技術・戦術について選手自身が必要なことを計画して進めることが特徴だ。「技の仕掛けやタイミングについて動画を見せながら教えても、全てを伝えることは難しい。レスリングは自身の感覚的な部分が重要なので、選手自身がトレーニング中にたくさん考えて、仲間と議論することが大事」と話していただいた。実際に練習風景を見学させていただくと、選手同士がコミュニケーションをたくさん取り、技のタイミングや戦術について話す姿が印象的であった。

小柴監督はトレーニングと同じく「食事管理」を重視している。アスリートは怪我しにくい身体作り、回復、睡眠、トレーニングと日々積み上げる中で、食事が特に重要だ。同校の選手たちは寮で栄養管理された食事を取る選手、実家にて自身で食事管理をして身体づくりをしているそうだ。「例えば、強い選手ほど、コンビニで買い物する際も成分表示を必ず確認しています（笑）」と日常を振り返る小柴監督。自身も選手時代、減量期間は苦しかったというが、実は減量よりも苦しいことが階級を上げる際の増量であるという。「減量を経て、試合が終わった後に食べる食事は格別においしいんです。けれども増量は食べることがトレーニングの一環だから、かなり苦しかったですね（笑）食べるご飯がおいしいと感じなくなるんです（笑）」と当時を振り返る。選手にはタンパク質、塩分、酢酸、脂質、炭水化物等の摂取を管理して体調管理するよう、選手にも伝えている。減量を気にせずに自身が食べたい食事は焼肉ですか、寿司ですか？（笑）と尋ねたところ、「やっぱり頭でカロリーや栄養分を考えてしまうんで、どちらかというと寿司ですかね（笑）」と小柴監督。

地域貢献活動として、近所の幼稚園年長クラスへレスリング体験を提供し、競技普及と身体を動かすことのおもしろさも発信しているという小柴監督。「レスリングセンターが建設される前に永年使用していたレスリング練習場の裏にどんぐりがたくさん拾える場所があるので、レスリング体験の後にお楽しみ会としても企画している。子供たちが喜んでくれる顔を見ていると元気が出てくる！」と意気込む。
国スポSAGA2024が開催される来年、地元からの応援を受けて競技が出来ることは滅多にない機会なので、万全の準備をして良い結果を選手には残してほしいと小柴監督は語り、「必ずレスリングは優勝します！」と満面の笑顔を見せてくれた。